CASES 予防医療実例のご紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

犬糸状虫症(フィラリア症)

病態と生活環
犬糸状虫(Dirofilaria immitis)は犬を終宿主とする線虫の一種です。
 まず、この寄生虫に感染している蚊が犬を吸血すると、蚊の口吻から脱落した幼虫が吸血痕から犬の体内に侵入します。

 犬の体内に侵入した幼虫は皮膚の下や筋肉の中などで脱皮したあと静脈血管内に再度侵入し、心臓を通って肺動脈に寄生して成虫になり、新たな幼虫を産出します。
 肺動脈に寄生したフィラリアによって血管壁が傷つけられると、それを修復しようとして肺動脈が拡張・狭窄したり、変形したりします。また、フィラリアに対するアレルギーなどによって局所的な炎症なども生じます。この状態が続くと右心不全を引き起こし、次第に咳をしはじめたり、痩せてきてしまい、重症化すると呼吸困難、失神、腹水などを生じて亡くなってしまうこともあります。
 また、大量に寄生した場合、フィラリアが心臓や血管に詰まってしまったり、赤血球がフィラリアにぶつかって破壊されたりして急に悪化する大静脈症候群というものもあります。この場合、赤いおしっこが出たり、貧血により歯肉などの粘膜が青白くなったり、黄疸、呼吸困難、意識消失などを突然発症し、最悪の場合亡くなってしまいます。


治療と予防
 血液検査や心エコーなどによって成虫が寄生していることが分かった場合は、まず成虫を駆除することから始めます。方法は大きく分けて2つで、1つは手術によって成虫を取り出す方法、もう1つは注射薬を投与してフィラリアを不活化させる方法です。しかし、前者は手術による患者さんへのダメージが大きく、後者は不活化したフィラリアが詰まってしまうリスクがあり、治療はなかなか難しいのが現状です。
 このため、フィラリア症では予防が特に重要となります。検査で成虫に感染していないことがわかったら、蚊の出始める4~5月から12月までしっかりと予防薬を投与することでフィラリア症を発症するのを防げます。


犬糸状虫症の検査がお済みでない方は早めの検査・予防をお勧めします。
執筆担当:獣医師 田中
本駒込動物病院
東京都文京区本駒込2-27-10
TEL 03-5319-1910