CASES 症例紹介
ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。
一般外科症例

片側皮下隠睾の犬の1例(潜在精巣、精巣が降りない、精巣がない)

雄犬の生殖器である精巣は、正常では陰嚢内に左右存在します。
しかし、精巣はもともとは腹腔内に存在し、体の成長とともに陰嚢へと降りてくる(精巣下降)行程があります。
犬では生後約1ヶ月までに、猫では生まれた時にすでに精巣下降は完了しています。
その一方で、様々な原因で精巣が正常通りに陰嚢に降りてこない、いわゆる潜在精巣というものがあります。
潜在精巣には、腹腔内に両側もしくは片側の精巣が残ってしまう「腹腔内隠睾」、皮下に残ってしまう「皮下隠睾」があります。

当院におきましても、どちらのタイプの潜在精巣もしばしば遭遇します。
腹腔内、皮下にかかわらず潜在精巣は放置すれば腫瘍化してしまうリスクが通常の精巣よりはるかに高いといわれています。
よって、潜在精巣は麻酔可能な時期になったらなるべく早い摘出手術が推奨されます。


今回は皮下に潜在精巣を持つ犬の症例報告になります。

症例は生後6ヶ月のポメラニアンで、右の精巣は陰嚢内に存在していましたが、左の精巣は陰嚢上部の皮下に触知されました。
攻撃性の増加、問題行動などから去勢手術を検討していた最中での発見となりました。

写真は、全身麻酔下で毛刈りをした後に撮った外貌写真です。陰嚢の右上に左の精巣が触知できます。

下の写真は手術で摘出された精巣の外貌です。
左が潜在精巣です。若干サイズが小さく、精巣上体などの構造物も正常と比べてやや形とバランスが異なっています。
今回摘出された精巣は明らかに形態上で奇形や腫瘍化を疑うものではありませんでした。

一方で、動物が成長し、長く放置された腫瘍化した精巣は、サイズも大きく、形も歪です。
そういった場合は病理検査をし、確定診断します。

早期に発見された潜在精巣では臨床症状がないことがほとんどですので、麻酔のリスクは通常の去勢手術とほとんど一緒です。
ただし、精巣の位置によっては左右精巣で異なった場所を切皮しないと摘出できないことがあり、通常一つの傷で済む去勢手術とは異なります。
今回の症例は比較的正中に近い場所に潜在精巣があったため、通常の去勢手術と同じ切開線で済みました。
手術後の麻酔の醒めも良好で、翌日に退院しています。


潜在精巣は、オーナー様自身で発見されることもありますが、小柄な子は精巣が小さいためにわかりにくいこともあります。
多くは子犬・子猫の時期のワクチンで病院から指摘されることがほとんどですが、不安なことや気になることがございましたらお気軽にご相談ください。

文責:獣医師 志良堂

本駒込動物動物病院
〒113-0021 文京区本駒込2-27-10  03-5319-1910
(豊島区・北区、駒込駅・千石駅近く)
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